測量班の人たちから
ふたゝびひとりぼくははなれて
このうつくしい Wind Gap
緑の高地を帰りながら
あちこち濃艶な紫の群落
日に匂ふかきつばたの花彙を
何十となく訪ねて来た
尖ったトランシットだの
だんだらのポールをもって
古期北上と紀元を競ひ
白堊紀からの日を貯へる
準平原の一部から
路線や圃地を截りとったり
岩を析いたりしたあげく
二枚の地図をこしらえあげる
これは張りわたす青天の下に
まがふ方ない原罪である
あしたはふるふモートルと
にぶくかゞやく巨きな犁が
これらのまこと丈高く
靱ふ花軸の幾百や
青い蝋とも絹とも見える
この一一の花蓋と蕋を
反転される黒土の
無数の条に埋めてしまふ
それはさびしい腐植にかはり
やがては粗剛なもろこしや
オートの穂をもつくるだらうが
じつにぼくはこの冽らかな南の風といっしょに
あらゆるやるせない撫や触や
はてない愛惜を花群に投げる