ひかって華奢なサラーブレッド

   息濃く熱いアングロアラヴ

   馬はつぎつぎあらはれて

   種馬検査所へ溯って行く

   白い頭巾でいばえたり

   水いろの羅沙を着たりして

   馬はあやしくいそいでくる

   風の透明な楔形文字は

   ごつごつ暗いくるみの枝に来て鳴らし

   またいぬがやや笹をゆすれば

   ふさふさ白い尾をひらめかす重挽馬

   あるひは巨きなとかげのやうに

   日を航海するハックニー

   ひとひら青い雲かげは

   かげらふを織り雪を織り

   なだらの草をすべって来ては

   かたくりの花もその葉のまだらを燃やす

   こんどはまるで熊そっくりの

   ゼラチンをかけたやうなものや

   さてははげしい雑種の雑種

   ほととぎすの眼付したものなど

   まことに馬はつぎからつぎと

   いくつもの黄いろな丘をめぐり

   にぎやかさうな水源へ

   雪融の流れをのぼって行く

 

 


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