四〇三

     岩手軽便鉄道の一月

                  一九二六、一、一七、

   

   ぴかぴかぴかぴか田圃の雪がひかってくる

   河岸の樹がみなまっ白に凍ってゐる

   うしろは河がうららかな火や氷を載せて

   ぼんやり南へすべってゐる

   よう くるみの木 ジュグランダー 鏡を吊し

   よう かはやなぎ サリックスランダー 鏡を吊し

   はんのき アルヌスランダー 鏡鏡鏡鏡をつるし

   からまつ ラリクスランダー 鏡をつるし

   グランド電柱 フサランダー 鏡をつるし

   さはぐるみ ジュグランダー 鏡を吊し

   桑の木 モルスランダー   鏡を……

   ははは 汽車(こっち)がたうたうなゝめに列をよこぎったので

   桑の氷華はふさふさ風にひかって落ちる

 


   注:本文7行目[鏡鏡鏡鏡]は、1文字分の中に[鏡]という文字が上下二段に積み重なって4個書かれている。

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