図案
一九二五、六、八、
原の上から地平線まで
あをあをとそらはぬぐはれ
ごりごり黒い樹の骨傘は
そらいっぱいに
藍燈と瓔珞を吊る
小さな億千のアネモネの旌は
野原いちめん
つやつやひかって風にながれ
葡萄酒いろのやさしい花のつりがねは
かすかにりんりん鳴ってゐる
白い二疋の磁製の鳥が
ごくぎこちなく飛んで来て
いきなり宙にならんで停り
がちんと嘴をぶっつけて
またべつべつに飛んで行く
漆づくりの熊蟻が
黒いポールをかざしたり
キチンの斧を鳴らしたり
せわしくそこをゆききする
ひとすじつめたい東の風が
なにかあやしい潅木から
強いかほりを運んでくると
その高原の雲のかげでは
もうつゝどりもうぐひすや
ごろごろごろごろ鳴いてゐる