霰の前

　　　　　　　　　　　　　　　　　　一九二五、四、二

　　　県道(みち)のよごれた凍(シ)み雪が

　　　西につゞいて氷河に見え

　　　畳んでくらい丘丘を

　　　春のキメラがしづかに翔ける

　　　　……凍った銀の斜子の月が

　　　　　　鉛(約八字不明)霧……

　　　北で一つの松山が

　　　重く澱んだ夜なかの雲(一字不明)

　　　なかばをどんより消されてゐると

　　　黒い地平の遠くでは

　　　ガラスの鳥も軋ってゐる

　　　　……眼に象って

　　　　　　泪をたゝえた眼にかたどって……

　　　丘いちめんに風がごうごう吹いてゐる

　　　ところがこゝは黄いろな芝がぼんやり敷いて

　　　笹がすこうしさやぐきり

　　　(約十字不明)空気の沼を(以下不明)

　　　　……眼に象って

　　　　　　かなしいその眼に象って……

　　　　　　　　（わたくしの拵えた蝗を見てください）

　　　　　　　　（なるほど　それは

　　　　　　　　　Rocky Mountain locust といふふうですね

　　　　　　　　　チョークでへりを隈どった

　　　　　　　　　黒の模様がおもしろい

　　　　　　　　　それは一疋だけ見本ですね）

　　　 (数文字不明)喪服(以下不明)

　　　 (数文字不明)ってゐないのに

　　　 (数文字不明)巨きな白い喪服を

　　 　(数文字不明)が着けたのだ

　　　　　　　　（ぼくの衣(ころも)は似合ふかい）

　　　　　　　　（ぼくのころもは似合ふかい

　　　　　　　　　ころもといって

　　　　　　　　　きみはピエロの形だよ）

　　　　　　　　（ふふんさうかい

　　　　　　　　　どうだいきみの指環の(以下不明)

　　　　　　　　（どうしてきみは(以下不明)

　　　　　　　　（専門家だよ我輩(以下不明)

　　　　　　　　　けれどもきみは何て事(以下不明)

　　　　　　　　（もうどうしてもどういっ(以下不明)

　　　　　　　　（きっぱり云ってやっ(以下不明)

　　　　　　　　（そしたら指環を(以下不明)

　　　　　　　　（えゝ　泪をたゝえ(以下不明)

　　　　　　　　（ぷふっ　おいおい

　　　　　　　　　エヂプト以来三千年もある術だぜ

　　　　　　　　　天賞堂へ行って見な(以下不明)

　　　(以下不明)