発電所
一九二五、四、二、
黒い鞘翅発電機(ダイナモコレオプテラ)と
電気炉の粗大な炭素棒ばかり
ぶるぶる顫ふ夜なかすぎ
亜鉛づくりの小さな分析課のなかで
誰かさびしく銀笛を吹く
……鈍った雪をあちこち載せる
鉄や斑糲岩の峯をめぐらす谷間です……
請願巡査も
するめを噛んでとろとろねむり
幾列の清冽な電燈は
華奢な盗賊紳士ふうした風のなか
……かすかな川の水音と
二十日の月の錫のあかりと……
ねずこを雲のその蛍光にたゞしくならべ
梢の影をみちに映して花候のやうにあやしくし
亜鉛づくりの小さな分析課のなかで
誰かひょろひょろ銀笛を吹く
(それでもわたくしは画工です)
にはかに工場の夜の屋根から
暗い火花が盛りあがり
二つに析けるガルバノスキー第二アリオソ