農民劇団
一九二五、四、二、
そのときわたくしは嫁いだ妹に云ふ
十三もある昴の星を
汗に眼を蝕れ
風にこゝろを労らしたためか
わづか五つと七つとに見る
この国の老いた野原の人たちのために
……水音とホップのかおり
青ぐらい峡の月光……
おまへのいまだに頑是なく
赤い毛糸のはっぴを着せた童子をば
舞台の雪の照明のなかに借せ
……谷の窪みのそのほのじろい並列は
達曾部川の鉄橋の脚……
そこではしづかにこの国の
古い和讃の海が鳴り
童子は誨へられたるごとく
無心に両手を合すであらう
……菩薩威霊を借したまへ
ぎざぎざの黒いきりぎしから
雪融の泉が崩れ落ち
種山あたり雲の蛍光
雪か風かの変質が
その高原のしづかな頂部で行はれる
……まなこつぶらな童子をば
しばらくわれに貸せといふ……
いまシグナルの暗い青燈