冬
一九二五、二、五、
がらにもない商略なんぞたてやうとしたから
そんなミザンスロピーにとっつかまったんだ
……とんとん叩いてゐやがるな……
なんだい、あんな、二つぼつんと赤い火は
……山地はしづかに収斂し
凍えてくらい月のあかりや雲!……
八時の電車がきれいなあかりをいっぱいのせて
防雪林のてまへの橋をわたってくる
……あゝあ、風のなかに消えてしまひたい……
蒼ざめた冬の層積雲が
ひがしへひがしへ畳んで行く
……とんとん叩いてゐやがるな……
世紀末風のぼんやり青い氷霧だの
こんもり暗い松山だの か
……ベルが鳴ってるよ……
向日葵の花のかはりに
電燈が三つ咲いてみたり
……ムーンディーア サンディーアだい……
巨きな雲の欠刻
……いっぱいにあかりを載せて電車がくる