四〇八

     昇冪銀盤

                  一九二五、一、二五、

   

   寅吉山の北のなだらで

   雪がまばゆい銀盤になり

   山稜の樹の昇羃列が

   そこに立派な影をうつし

   またふもとでは

   枝打ちされた緑褐色の松並が

   弧(アーク)線になってうかんでゐる

   

   恍とした佇立のうちに

   雲はばしゃばしゃ飛び

   風は

   中世騎士風の道徳をはこんでゐた

 

 


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