暁穹への嫉妬
一九二五、一、六、
薔薇輝石や雪のエッセンスを集めて
その清麗なサファイア風の惑星を
溶かさうとするあけがたのそらに
わたくしは何を挨拶し なにを贈ればいゝのだらう
なあにそいつはまん円なもので
リングもあれば月も七っつもってゐる
第一あんなもの生きてもゐないし
まあ行って見ろごそごそだぞと
誰かゞ仮に云ったとしても
ぼくがあいつを恋するために
このうつくしいあけぞらを
少うし変な顔をして 見てゐることは変らない
それでて変らないどこかそんなことなど云はれると
いよいよぼくはどうしていゝかわからない
いったいさっきみちが渚を来たときに
あんまり青くあやしく澄んで
ぼくを誘惑しないといゝんだ
雪をかぶったはひびゃくしんと
百の岬がいま明ける
あの清らかなサファイア風の惑星が
おまへの上の鴇いろをした眩盤に
ひかりたえだえ溶けかゝるとき
わたしは何を挨拶し
なにをちかへばいゝんだらう