三三八

     異途への出発

                  一九二五、一、五、

   

   月の惑みと

   巨きな雪の盤とのなかに

   あてなくひとり下り立てば

   あしもとは軋り

   寒冷でまっくろな空虚は

   がらんと額に臨んでゐる

     ……楽手たちは蒼ざめて死に

       嬰児は水いろのもやにうまれた……

 

 

   (断片裏面)

 

     でに失敗を約すると    わたくし

                  ひとり

     たくしにしろわかってゐる たった

            かすかに  わたくし

        ……底びかりする水晶天の

          一ひら白いひゞのあと

 

 


   ←前の草稿形態へ

次の草稿形態へ→

<旅程幻想詩群>へ→