客を停める
一九二四、一一、一〇、
それではなんて帰るのか
まあ待ちたまへ
あすこの虹の門をくぐって、
凍った風をひといき吸へば
あとはもうあんなまっ赤な山と谷
……こんもりと松のこもった岩の鐘……
どこから雨が落ちかぶさるかわからない
……電信ばしらも林の稜も
つなみみたいに一度に鳴って
虹はあらゆる毒剤よりも鮮らしく
青いアークをそらいっぱいに張りわたす……
まあ掛けたまへ 掛けたまへったら
雨どこぢゃない氷だよ
どこでそいつが落ちかぶさるかわかったもんか
……麦のはたけのまだうららかな緑の上を
木の葉はまるで鼠のやうに
ぐらぐら東へ流される……
まあもう少し掛けたまへ
ぢきにきれいな天気になるよ
シガーを一つあげるから
キャベヂで巻いたシガーをさ