業の花びら
一九二四、一〇、五、
夜の湿気が風とさびしくいりまじり
松ややなぎの林はくろく
そらには暗い業の花びらがいっぱいで
わたくしは神々の名を録したことから
はげしく寒くふるえてゐる
ああ誰か来てわたくしに云へ
億の巨匠が並んで生れ
しかも互ひに相犯さない
明るい世界はかならず来ると
……遠くでさぎがないてゐる
夜どほし赤い眼を燃して
つめたい沼に立ち通すのか……
(祀られざるも
神には神の身土がある)
松並木から雫が降り
わづかのさびしい星群が
西で雲から洗はれて
その二っつが
黄いろな芒を結んだり
残りの巨きな草穂の影が
ぼんやり白くうごいたりする