また青じろい尖舌(シタ)を出す
一九二四、九、一七、
針葉の方の樹木(やつら)は
ピネンも噴きリモネンも噴き酸素も噴く
栗の木の方は
まづおきまりの酸素を出して
あとは緑のラムプをざらに吊りさげる
……林いっぱい蜂(すがる)のふるひ……
その栗の木の隙間から
さまざまの飾禾草(オーナメンタルグラス)の芒や
古くさい宝石針がさしこんでくる
……華奢にひかってひるがへるのは何鳥だ……
水いろのそら白い雲
すっかりアカシヤづくりになった
……こんどは蝉の瓦斯発動機(ガスエンヂン)が林をめぐり
日は青いモザイクになって砕ける……
鳥はどこかで
青じろい尖舌(シタ)を出すことをかんがへてるぞ
(Gaillardox - gaillardae)
しかるにどうだ
羊歯やこならの葉と葉のあひだ
落葉松の毛と毛のあひだ
結局森の空気の分を
一センチづつもう縦横に
蜘蛛が区割りをつけてゐる
そしてたまたま林の上で
あのまっ青な凹面鏡がゆすれると
そこらはまるで
暗い虹だの顫えるなみでいっぱいになる
そのたゞなかを
そのたゞなかを
あのありふれた百が単位の羽虫の群が
ミクロドームにやられずに
光って光って自由自在に飛んでゐる
もうかうなると
概然論もいかものなどでは間に合はない
羽虫がさういふ性質だとでもするんだな
(Gaillardox - gaillardae)
鳥がどこかで
また青じろい尖舌(シタ)を出す