秋と負債
一九二四、九、一六、
半穹二グロスからの電燈が
おもひおもひの焦点(フォカス)をむすび
はしらの陰影(かげ)を地に落し
濃淡な夜の輻射をつくる
……またあま雲の螺鈿からくる青びかり……
ポランの広場の夏の祭の負債から
わたくしはしかたなくここにとゞまり
ひとりまばゆく直立して
いろいろな目にあふのであるが
さて徐ろに四周を見れば
これら二つのつめたい光の交叉のほかに
もひとつ見えない第三種の照射があって
ここのなめらかな白雲石(ドロミット)の床に
わたくしの影を花盞のかたちに投げてゐる
しさいに観ずれば観ずるほど
それがいよいよ皎かで
ポランの広場の狼避けの柵にもちゃうどあたるので
もうわたくしはあんな sottise な灰いろのけだものを
二度おもひだす要もない