三〇一

     秋と負債

                  一九二四、九、一六、

   

   半穹二グロスからの電燈が

   おもひおもひの焦点(フォカス)をむすび

   はしらの陰影を地に落し

   濃淡な夜の輻射をつくる

     ……またあま雲の螺鈿からくる青びかり……

   ポランの広場の夏の祭の負債から

   わたくしはしかたなくここにとゞまり

   ひとりまばゆく直立して

   いろいろな目にあふのであるが

   さて徐ろに四周を見れば

   これら二つのつめたい光の交叉のほかに

   もひとつ見えない第三種の照射があって

   ここのなめらかな白雲石(ドロミット)の床に

   わたくしの影を花盞のかたちに投げてゐる

   しさいに観ずれば観ずるほど

   それがいよいよ皎かで

   ポランの広場の狼避けの柵にもあたるので

   もうわたくしはあんな sottige な灰いろのけだものを

   二度おもひだす要もない

 

 


   ←前の草稿形態へ

次の草稿形態へ→