一七九

     谷の昧爽に関する童話風の構想

                  一九二四、八、一七

   

   草の穂やおほばこの葉が

   みんなくっきり影を落す

   この清澄な月の昧爽近くを

   楢の木立の白いゴシック廻廊や

   降るやうな虫のジロフォンに送られて

   みちはまもなく原始の暗い椈林

   つめたい谿にはいらうとする

 

 


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