夏
一九二四、七、一三、
緑青の巨きな松の嶺から
四疋の鳥が吐き出されれば
そこは恐ろしく黝んだ積雲の盛りあがりで
一つの咽喉が黄いろに焦げついたり
それがまたくっきり次に投影されたり
下では融けかゝるオレフィンの雲や
すさまじい天の混乱の序曲です
またひときれの雷が鳴り
どこかで杏を灼く匂もする
(風がわたくしを熱します)
松林のなかにわけ入ってみれば
あたらしいテレピン油の香が胸をうち
炭窯の中には小さなドラモンド光もあって
一羽の連雀が叫んでゐる
ぜんたいドラモンド光は眼にわるい
(まあ あたし
月見草の花粉でいっぱいだわ) ※
かきつばたの火は燃える燃える
雲がちらばるとき
いちめん若い赤楊の木の群落が
硅孔雀石(クリソコラ)の葉をさんさんと鳴らす
※ 一五八と同種の幻聴です