鳥の遷移
鳥がいっぴき葱緑の天をわたって行く
わたくしは二こゑのかくこうを聴く
あのかくこうが
飛びながらすこうしまへに啼いたのだ
それほど鳥はひとり無心にとんでゐる
鳥は遷り
あとはだまって飛ぶだけなので
前のひびきがそれぎりになり
碧い鏃のグラフをつくる
……青じろいそらの縁辺……
かくこうは移り
いまわたくしのいもうとの
墓場の方で啼いてゐる
……その墓森の松のかげから
黄いろな電車がすべってくる
ガラスがいちまいふるえてひかる
もう一枚がならんでひかる……
鳥はいつかずっとうしろの
森にまはって啼いてゐる
あるひはそれはべつのかくこうで
さっきのやつはだまってくちはしをつぐみ
水を呑みたさうにしてそらを見上げながら
わたくしのいもうとの墓にとまってゐるかもしれない