一一八

     凾館港春夜光景

                  一九二四、五、一九、

   

   海ぞこのマクロフィスティス群にもまがふ

   桜の花の梢には

   いちいちに氷質の電燈を盛りまた

   黒曜玻璃の夜空に

   奇怪な虹の汁をそゝげば

   その淫蕩な赤い酒精にとかされながら

   底びかりする霧雨や

   冴え冴え鳴らす黄金の噴泉

   うっこんかうの花杯の列は

   また海百合の椀をもまじえ

   瓦斯の灯に照るバナナの森は

   巨きな紅の蟹も這はせる

 

 


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