凾館港春夜光景
一九二四、五、一九、
海ぞこのマクロフィスティス群にもまがふ
桜の花の梢には
いちいちに氷質の電燈を盛りまた
黒曜玻璃の夜空に
奇怪な虹の汁をそゝげば
その淫蕩な赤い酒精にとかされながら
底びかりする霧雨や
冴え冴え鳴らす黄金の噴泉
うっこんかうの花杯の列は
また海百合の椀をもまじえ
瓦斯の灯に照るバナナの森は
巨きな紅の蟹も這はせる
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