五二

     嬰児

                  一九二四、四、一〇、

   

   なにいろをしてゐるともわからない

   ひろぉいそらのひととこで

   縁(へり)のまばゆい黒雲が

   つぎからつぎと爆発される

        (そらたんぽぽだ

         しっかりともて)

   それはひとつづついぶった太陽の射面を過ぎて

   いっぺんごとにおまへを青くかなしませる

     ……そんなら雲がわるいといって

       雲なら風に消されたり

       そのときどきにひかったり

       たゞそのことが雲のこころといふものなのだ……

   そしてひとでもおんなじこと

   鳥は矢羽のかたちになって

   いくつも杉の梢に落ちる

 

 


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