嬰児
一九二四、四、一〇、
なにいろをしてゐるともわからない
ひろぉいそらのひととこで
縁(へり)のまばゆい黒雲が
つぎからつぎと爆発される
(そら たんぽぽだ
しっかりともて)
それはひとつづついぶった太陽の射面を過ぎて
いっぺんごとにおまへを青くかなしませる
……そんなら雲がわるいといって
雲なら風に消されたり
そのときどきにひかったり
たゞそのことが雲のこゝろといふものだから……
そしてひとでもおんなじこと
いまは黄いろなたんぽぽを握り
あしたはなにか
いろいろ立派な名前のついた
さういうふものをとらうとして
それがとれずに
鳥は矢羽のかたちになって
いくつも杉の梢に落ちる