山火
一九二四、四、六、
血紅の火が
ぼんやり尾根をすべったり
またまっ黒ないただきで
奇怪な王冠のかたちをつくり
焔の舌を吐いたりすれば
夜の微塵はしげく降り
ひのきの黝い髪もみだれる
(おゝ大師 たゞひとひらの示し)
あるいひはコロナや破けた肺の形にかはる
その恐ろしい夜の華
(衆生無辺誓願度 煩悩無辺誓願断)
酔って口口罵りながら
村人たちが溯ってくる
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