休息
一九二四、四、四、
中空(なかぞら)は晴れてうららかなのに
西嶺(ね)の雪の上ばかり
ぼんやり白く淀んでゐる
そこにいくつもの雲の肖顔が
巨大な洞窟人類の
方向のない Libido をかゝげ
ひばりはあちこち啼いてゐる
氷と藍との東橄欖山地から
つめたい風が吹いてきて
ねむたいわたしの耳もとに
つぎからつぎとまことをちかひ
またあかしやの棘ある枝や
すがれの禾草を鳴らしたり
三本立ったよもぎの茎に
ふしぎなおどりをさせたりする
(エッコロ クアア)
数知らぬひかりの点がうき沈み
乱積雲の肖像はゆるやかに北へながれる
(eccolo qua !)