一七

     丘陵地を過ぎる

                  一九二四、三、二四、

   

   きみのところはこの前山のつづきだらう

   やっぱりこんなごつごつ黝い岩なんだらう

   松や何かの生え方なぞもこの式で

   田などもやっぱり段になったりしてゐるんだな

   いつころ行けばいゝかなあ

   ぼくの都合はまあ来月の十日ころ

   仕事の方が済んでから

   木を植える場所や何かも決めるから

   ドイツ唐檜にバンクス松にやまならし

   やまならしにもすてきにひかるやつがある

   白樺は林のへりと憩みの草地に植ゑるとして

   あとは杏の蒼白い花を咲かせたり

   きれいにこさえとかないと

   お嫁さんにも済まないからな

   雪が降り出したもんだから

   きみはストウブのやうに赤くなってるねえ

     水がごろごろ鳴ってゐる

   さあ犬が吠え出したぞ

   さう云っちゃ失敬だが

   まづ犬の中のカルゾーだな

   喇叭のやうないゝ声だ

     ひばがきのなかの

     あっちのうちからもこっちのうちからも

     こどもらが叫びだしたのは

     けしかけてゐるつもりだらうか

     それともおれたちを気の毒がって

     とめやうとしてゐるのだらうか

   ははあきみは日本犬ですね

     生藁の上にねそべってゐる

     顔には茶いろな縞もある

   どうしてぼくはこの犬を

   こんなにばかにするのだらう

   やっぱりしゃうが合はないのだな

     どうだ雲が地平線にすれすれで

   そこに一すじ白金環さへつくってゐる

 

 


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