雲の信号
あゝいゝな、せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし
山はぼんやり
岩頸(がんけい)だつて岩鐘(がんしやう)だつて
みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ
そのとき雲の信号は
もう青白い春の
禁慾のそら高く掲(かゝ)げられてゐた
きつと四本杉には
今夜は雁もおりてくる
←前の草稿形態へ
宮澤家本の形態へ→