身うち怪しく熱りつゝ

   待合室に入り来れば

   隅にはセキセイインコの色の

   衣をなせし淫れめの

   おごりてまなこうちつむり

   かなた東のソーファには

   かって獅子とも虎とも呼ばれ

   いま歯ぞ抜けし村長の

   頬明き孫の中学生を

   侍童のさまに従へて

   手袋の手をうちかさね

   いとつゝましく汽車待てり

   さあれ女に見まほしき

   その子の額髪あらく

   さかだてるこそおかしけれ

   この時雲はちゞれてひかり

   外の面俥の往来して

   雪はさびしくよごれたる

   二月の末のくれちかし

   営利卑賤の徒にまじり

   十貫二十五銭にて

   いかんぞ工場立たんなど

   よごれしカフスぐたぐたの

   外套を着て物思ふ

   わが姿こそあはれなれ

   とは云へなんぞ人人の

   雪のなかより入り来れば

   暖炉の赤き火に寄れば

   遠き海見るまなこして

   ひとみやさしくうるめるや

   見よ黒服に剣つけし

   その人何の司ぞや

   あるひはまひるやゝ赤き

   ロイド眼鏡の一双や

   はじめおごれる淫れめの

   あまりににぶく

   はかなきさまにめひらきて

   亜鉛のごときまなこして

   あまりににぶく火を見るは

   何の病かなせるらん

   

 


次の草稿形態へ→

   ←前の草稿形態へ