隅にはセキセイインコいろの白き女

   おごりてまなこをつぶりてあれば

   蓋をしめたる緑タイルの前あたりには

   かっては獅子とも虎とも呼ばれ

   いま歯抜けたる老村長

   桜いろなるその孫と

   手袋の手をうちかさね

   いとつゝましく汽車をまつ

   さあれ面映ゆるその孫の

   髪毛やゝに獅子のたてがみのごとく

   逆立てるこそおかしけれ

   この時雲はちゞれてひかり

   床はけしくもよごれたる

   二月の末の午后にありしか

   あゝ今日は

   一貫二十五銭にては

   引き合はずなど

   ぐたぐれの外套を着て考ふることは

   心よりも物よりも

   わがおちぶれしかぎりならずや

   

  ◎遠き海見るまなこして

   ストウブの火にあたる若者

   なにとて人人

   雪のなかより入り来れば

   暖炉の赤き火に寄りて

   遠き海見る瞳をなすや

   見よ黒服に黒のひも

   ふちどる人は剣を吊せり

   

  ◎かくてこそふたたびわれの

   よごれたるカフスのむれにうちまじるらん

   このときつひに膨れぼたき

   セキセイインコわが側に来る

   

  ◎あまりににぶくみつめたる

   ひるの瞳こそあやしけれ

   

  ◎ロイドめがねは

   ひるあまりに赤しといへ

   

  ◎傷痛けれども

   肌膚のこそげはとり去りぬべし

   

 


次の草稿形態へ→