森の上のこの神楽殿

   いそがしくのぼりて立てば

   かくこうはめぐりてどよみ

   松風に血もさやぐなり

   

   野のきはみ北をのぞめば

   紫波の城の二本の杉

   かゞやきて黄ばめるものは

   そが上の麦熟すらし

   

   夏雲の乱れとぶ下、

   青々と山なみははせ、

   丘らしきかたちもあれど

   君が棲むまちは見えざり

   

   来しかたは夢より淡く

   行くすゑは影より遠し

   今日もまた病む人を守り

   つゝがなくきみやあるらん

   

   うすくらき古着の店を

   ほしいまゝはなれ来しかば

   ひとり居て祖父や怒らん

   いざ帰りわびて笑はん

   

   うちどよみまた鳥啼けば

   そこはかと君ぞ恋しき

   などてかく恋しきものぞ

   松の風日に鳴るものを

 

 


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