田園迷信

   

   果樹のまはりは直角の

   水銀の池めぐらかし

   十の蜂舎の成りしころ

   よき家成さば必らずや

   鬼ぞうかがふといましめぬ

   かしらかむろのひとありき

   山はかすみてめくるめき

   桐むらさきに燃ゆるころ

   その農園の扉をば

   おとづれて来しをとめあり

   そのひとひるはひねもすを

   風にガラスの点を播き

   夜はなやましき歌よもすがら

   かくて稲羽をつけしころ

   人は全身うち敗れ

   をとめは遠く去りてけり

 

 


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