泥岩遠き

   むかしのなぎさ

   いま水増せる川岸に、

   風うち吹きて、

   ちらばる蘆や、

   波わが影をうち濯ふ、

 

   蛇紋の峯は、

   かしこに黒く、

   孤高はかなくほこれども、

   川しろじろと、

   峡より入りて、

   二つの水はまじはらず、

 

   風蒼茫と、

   草緑を吹き、

   あてなく投ぐるわが眼路に、

   きみ待つことの

   むなしきを知りて

   なほわが瞳のうち惑ふ

 

   尖れるくるみ、

   巨獣のあの痕、

   磐うちわたるわが影を、

   濁りの水の

   かすかに濯ふ

   たしかにこゝは修羅の渚

 


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