土性調査慰労宴

   

   酔ひて博士のむづかしく

   慶応出でし町長も

   たゞさりげなくあしらへば

   縮れし髪を油もて

   うち堅めたるをみな子も

   なすべきさがを知らぬらし

 

   面をひそめて案ずるは

   接待役の郡の技手

 

   ことあたらしくうちしける

   青き藺草の氈の上に

   人人のかげさゆらげば

   昨日も今日もめぐり来し

   たばこばたけのおもひあり

 

   また人人の膳ごとに

   黄なる衣につゝまれて

   三尾添へたる小魚は

   昨日も今日もたどり来し

   くるみ覆へるかの川の

   中に()れたる小魚なれ

 

   村長われが前に居て

   わが酒呑まず得酔はねば

   西瓜を喰めとすゝむるは

   組合村の長なれや

 

   あゝこのま夏山峡の

   白き銀河の下にして

   天井ひくきこの家に

   つどへる人ぞあはれなれ

   

 


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