月の燐火をかたむけて
のぼる水杵に近づきて
臼をさぐればはかなしや
粟の殻こそ搗かれたれ
さらばとみちをよこぎりて
庭をめぐれば月あかり
束せし廐肥の幾つらに
祈るがごとく照り映えぬ
うまゐの馬の胸やらん
おぼろに鈴の音ありて
ひるの焼畑石の畑
ひとも生くとし見えざりき
遁れて人なき山彙(やま)の二日路を
夜さり走せこし寅吉は
塩のうるゐの茎噛みて
ふたたび遁れ走りけり
←前の草稿形態へ
次の草稿形態へ→