早池峯中腹

   

   水と濃きなだれの風や

   縦横の小鳥のすだき、

   日は山の下背にあれど

   ぬかとべる雲は燃えたり

 

   青ぞらの淵に泛べる

   この山のあやしきすがた

   菓子をもて盛られしに似て

   妖精も出でなんけはひ

   山肌をうち覆へるは

   緑茶せしカステラの群

   ブリーベルきらめく露と

   うゐきやうの奇しき香料

   碧き眼のすがるはふるひ

   牛酪いろのウェーブライトや

   こめつがの青き糖菓は

   むらさきの葡萄を生めり

   褐やまたオリーヴいろの

   なめ石の門のしたにて

   そらいましましろく燃えて

   きりのむらしろくながるゝ

   青々とうちも湛ゆる

   北上の野はなほねむる

 

 


   ←前の草稿形態へ

次の草稿形態へ→