秘事念仏の大師匠

   元信斉は妻子もて

   北上ぎしの南風

   けふぞ陸穂を播きつくる

   

   雲紫に日は熟(う)れて

   楊の花は黄に呆(ほゝ)

   川はひたすらかゞやきの

   八功徳水ながすなり

   

   その子しばらく口開きて

   胡桃を仰ぎ佇めば

   元信斉は歯軋りつ

   石を発止と投げつくる

   

   青きひかりの蠅めぐる

   牛糞(うしごえ)捧げその妻は

   たゞ恩人ぞ導師ぞと

   おのが夫(つま)をば拝みくる

 

 


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