第十六葉
にはかにも立ち止まり
二つの耳に二つの手をあて
電線のうなりを聞きすます
※
そのとき桐の木みなたちあがり
星なきそらにいのりたり。
※
みなみ風なのに
こんなにするどくはりがねを鳴らすのは
どこかの空で
氷のかけらをくぐって来たのにちがひない
※
瀬川橋と朝日橋との間のどてで
このあけがた、
ちぎれるばかりに叫んでゐた、
電信ばしら。
※
風つめたくて
北上も、とぎれとぎれに流れたり
みなみぞら