光の渣

   

   コロイダールな風と夜

   幾方里にわたる雲のほでりをふりかへり

   須達童子は誤って一の悲願を起したために

   その后ちゃうど二百生

   新生代の第四紀中を

   そのいらだゝしい光の渣の底にあてなく漂った

   

      シグナル エンド シグナレス!

     幾百乱れる電柱と

     またまっ黒な鉄のタンクは

     メタンや一酸化炭素水素など

     迷ひを集積するものである

   

   その青じろい光の渣の下底には

   黒水晶が熱して砕けるときのやうな

   風の刹那の眼のかゞやきや

   緑とも見え藍とも見える

   つやつやとした黒髪の

   そのしばらくの乱れをひさぎ

   神経質なガスの灯や

    丶丶丶    には

   あでやかに

   またきらびやかにわらひながら

   あけがたはまた日のうちは

   青々としてかなしみを食む

        あやしい人魚の群が棲む

   

   そのあるものはスコットランド驃騎兵の

                 よそほひをして

   無邪気な少年鼓手のやうに

           丶丶丶

   そのあるものは丶丶丶

        丶丶丶

   無意識のなかにこれらが侵して入ってくれば

   

   

   さうしてすべてこれらの丶丶丶は

   何は何何で何だわよと主張をし

   何は何何で何だわよと他を叱り

   丶丶丶は丶丶丶で丶丶丶だわよ 戦って

   いまや巨きな東京をほとんど征服しやうとする