恋敵ジロフォンを撃つ

   

   わたくしが聴衆に会釈して

   舞台を去らうとしたときに

   上手の方でほとんど予想もしなかった

   ジロフォンの音が鳴り出しました

   

   それはわたくしとその娘との交情を

   まったくみんなに曝露させ

   またわたくしをいかにも烈しくいらだたすやう

   ずゐぶんしばらく鳴りました

   

   もちろんわたしは

   それがまさしきわたくしの敵

   ゴムのからだにはでなぶりきの制服を着た

   バッスうたひのこっそり忍んだ仕事なことは

   よく承知して居ましたのです