一九二七、九、

   

   十里にわたるこの沿線の

   立派な華麗樹品評会(フアイントリーズシヨウ)である

   けだしこの緑いろなる車室のなかは

   殆んど秋の空気ばかりで

   そらいっぱい

   ひかる灰いろの層巻雲のカーテンがはられ

   じつに壮麗な梢の列

   また青々と華奢な梢が

   つぎつぎ出没するのである

       青すぎ青すぎ

       クリプトメリアギガンテア

       はんのきはんのき

       アルヌスランダアギガンテア

       楢はまさしく

             ・・・で

                である

   こんな考は

   借金をもったり

   麦作のことを試験場に調べに出掛けたりするものには

   どうもぜいたく過ぎるといふのはたしかだけれども

   それでもやっぱり

   そらは立派な華麗樹木の品評会だ

   またあたらしく帝王杉があらはれて

   風がたちまち鷹を一ぴきこしらえあげる

 

 


次の草稿形態へ→