〔春来るともなほわれの〕

   

   春来るともなほわれの

   えこそは起たぬけはひなり

   さればかしこの崖下の

   高井水車の前あたり

   矢ばねのさまに鳥とびて

   くるみの列の足なみを

   雪融の水の来るところ

   乾田の盤のまなかより

   青きすゞめのてっぽうと

   稲の根赤く銹びにたる

   湯気たつ土の一かけを

   とり来てわれに示さずや

 

 


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