熱とあえぎをよそにして

   死のさかひをまどろみし

   このよもすがらひねもすを

   さこそはまもり給ひしか

   

   瓔珞もなく沓もなく

   たゞ灰いろのあらぬのに

   庶民がさまをなしまして

   みこゝろしづに居りたまふ

   

   み名を知らんにおそれあり

   さは云へまことかの文に

   三たびぞ記し置かれける

   おんめがみとは仰ぎまつる

   

   さればなやみや熱のなか

   みだれごころのさなかにも

   み神のみ名によらずして

   法の名にこそきましけれ

   

   瓔珞もなく沓もなく

   はてなき業の児らゆゑに

   みまゆに雲のうれひして

   さこそはしづに居りたまふ

 

 


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