〔その恐ろしい黒雲が〕

   

   その恐ろしい黒雲が

   またわたくしをとらうと来れば

   わたくしは切なく熱くひとりもだえる

   北上の河谷を覆ふ

   あの雨雲と婚すると云ひ

   森と野原をこもごも載せた

   その洪積の台地を恋ふと

   なかばは戯れに人にも寄せ

   なかばは気を負ってほんたうにさうも思ひ

   青い山河をさながらに

   じぶんじしんと考へた

   あゝそのことは私を責める

   病の痛みや汗のなか

   それらのうづまく黒雲や

   紺青の地平線が

   またまのあたり近づけば

   わたくしは切なく熱くもだえる

   あゝ父母よ弟よ

   あらゆる恩顧や好意の后に

   どうしてわたくしは

   その恐ろしい黒雲に

   からだを投げることができやう

   あゝ友たちよはるかな友よ

   きみはかゞやく穹窿や

   透明な風 野原や森の

   この恐るべき他の面を知るか