事件

   

   Sakkya の雪が 澱んでひかり

     野はらでは松がねむくて

     鳥も飛ばないひるすぎのこと

   いきなり丘の枯草を

   南の風が渡って行った

   すると窪地に澱んでゐた

   つめたい空気の界面に

   たくさん渦が柱に立って

   さながらミネルヴァ神殿の

   廃址のやうになったので

   窪みのヘりでゲートルもはき

   頬かむりもした幸蔵が

   萓のつぼけをとる手をやめて

   おかしな顔でぼんやり立った