〔鳴いてゐるのはほととぎす〕

   

   鳴いてゐるのはほととぎす

    …………to-të-to-to

    to-té-te-to-të-to-to tí-ti-ti-ti-ti-ti

   ぐっしょりの寝汗だ

   手拭を置くとよかった

       ti-ti-ti またやりだした

   〔to-té-te-to-të-to-to

    to-té-te-to-të-to-to tí-ti-ti-ti-ti-ti〕

   川ばたよりはいくらか近い

   三日月沼の上らしい

   落ちるやうに飛んだり

   斜に截ったりしてゐるらしい

   三時十分だ

   そらにかすかな菫のいろがうかぶころだ

   鳥はもう鳴かない

   まもなく崖にかくこうが来てなきだすころだ

   それが互ひに呼んだり答へたり

   一つが一つの反響のやうにきこえたり

   にぎやかになれば

   こんどは小さな鳥どもが

   はじめは調子も何もなく

   たゞ点々になきはじめる

   そのころそらはもうしろく

   となりでは

   ぶりぶり憤りながら佐吉が起きる

   起きるとそのまゝ顔も洗はず

   今日の田植えの場所へ行って

   ごみのうかんだつめたい水へはいり

   だまって馬の指竿をとる

   そのころまでは

   まだ四五十分

   もういちどねむらう