第三芸術

   

   蕪のうねをこさえてゐたら

   白髪あたまの小さな人が

   いつかうしろに立ってゐた

   それから何を播くかときいた

   赤蕪をまくつもりだと答へた

   赤蕪のうね かう立てるなと

   その人はしづかに手を出して

   こっちの鍬をとりかへし

   畦を一とこ斜めに掻いた

   おれは頭がしいんと鳴って

   魔薬をかけてしまはれたやう

   ぼんやりとしてつっ立った

   日が照り風も吹いてゐて

   二人の影は砂に落ち

   川も向ふで光ってゐたが

   わたしはまるで恍惚として

   どんな水墨の筆触

   どういふ彫塑家の鑿のかほりが

   これに対して勝るであらうと考へた