〔穂を出しはじめた青い稲田が〕

   

   穂を出しはじめた青い稲田が

   つかれのなかに匆忙と消え

   縮れてひかる七月の雲や

   組合小屋の亜鉛のやねから

   さわやかな rice marsh のひるすぎを

   町へ芝居の脚本をとりに行く

   組合主事は更鶴声と名のり

   傘松やはやくもわたる秋の鳥

   あるひははるかなかすみのはてに

   あいなくそびえる積雲の群

   まっしろなそらと

   いま穂を出したすゝきの波と

   B.Gant Destupago は大きな黒の帽子をかぶり

   Faselo はえりおりの白いしゃつを着て

   rake をかついであとから行く

   酸性土壌で草も育たぬのに

   小松はたいへん荒っぽく

   その針痛い野はらです

   あゝひるすぎのつかれのなかに

   むしろ寒天風にもけぶり

   むしろ液体状にも青く

   膠朧として過ぎて行く

   線路の岸の萓むらです