〔たまたまに こぞりて人人購ふと云へば〕

   

   たまたまに

   こぞりて人人購ふと云へば

   夜もねむらずたかぶれる

   わがこゝろこそはかなけれ

   さあれば今日は人なべて

   情なきさまにうち笑みて

   松うちゆする雨ぞらに

   さびしくそぼちわが立てば

   つかれやぶれし廃駅の、

   はかなき春を金巾の、

   黄格子縞の外套と

   大人のさまに頬かぶれる

   児をつれ行ける母もあり