〔そゝり立つ江釣子森の岩頸と〕

   

   そゝり立つ江釣子森の岩頸と

   枝みだれたる雪の松

   枝すぐならぬ雪の松

   そらのけぶりにうちみだれ

   か黒き針を垂るゝとか

   

     余りに大なる屈撓性は

     無節操とぞそしられぬ

     県官をとはんとて

     今日わがひとり行けば

     電線あやふく雲に上下し

     保線工夫のひとびとの

     空きし車室のかたすみに

     さびしくもだして腰掛くる