〔鎧窓おろしたる〕

   

   鎧窓おろしたる

   車室の夢のなかに

   乱世のなかの

   西郷隆盛のごときおももちしたるひとありて

   眉ひそめし友の

   更に悪き亀のごとき眼して

   暑さと稲の青きを怒れり

   洋傘の安き金具に日は射して

   貴紳のさまして

   鎧窓の下を旅し

   淡くサイダーの息はく

   をのこぞあはれなり

   そこに幾ひら雲まよひ

   そこにてそらの塵沈めるを

   二時水あぐるてふ樋の

   みのらぬ稲に影置ける

   また立えりのえり裏返し

   学生ら三四を連れ

   肩いからして行けるものあり