〔topazのそらはうごかず〕

   

   topaz のそらはうごかず

   峡はいま秋風なくて

   互の目なる小き苗代

   ましろなる水を湛えて

   をちこちに稲はうち伏し

   その穂並あるひはしろき

   またブリキのいろなせる

   蓮華には白き花さき

   はるばると電柱は並み

   はてにしてうちひらめける

   温石の青き鋸

   いと小き軽便の汽車

   ほぐろなるけむりをはきて

   ことことと峡をのぼれる

   丘々のすゝきも倒れ

   蘆の葉ぞひとり鋭き

   このときぞろぞろと軽鉄過ぎ

   卵を日にすかし見る

   鉄道役員とも見ゆる人や

   さては四人の運送屋

   同じき鋭きカラつけて

   何かはしらずほくそえみ

   わらひて行けるものもあり